Nae0830’s blog

山田亮一など

消えた猫が突然姿を現した話。

お元気ですか。ブログの最初に「お元気ですか」と書くの、ぽくてかっこいいです。

 

うちの家は一階なのだが、よく窓辺にいろいろな猫が来てそこに数分居座って「にゃー」と鳴いて闇夜に消えていく、ということがよくあった。ごはんをあげようと、網戸を開けると逃げてしまうので何もせずただ目を合わせてにこっと笑うだけだった。

また、土手を歩いているときに草むらからぼろぼろの首輪をつけた白黒の黄色い目をした猫が、「にゃー」と鳴いてこちらにすり寄ってくることがあった。決して腹を見せたり隙を見せたりするようなことはなかったが、警戒の中で甘えたい気持ちがあるようで、それを私にすりすりしてきているようだった。幸せだ。

 

そんな生活が数年ほど続いた時、ぱたっと猫が来なくなった。

前は三匹ほどの成猫が日替わりで来ていたのだが三匹とも来なくなってしまった。たまに猫の喧嘩している声が聞こえるのだが、窓辺には来ない。

最初は「しばらくしたらまたくるだろう」と思っていたのだが、一か月たっても来ない。半年たっても来ない。一年たっても来ない。そして、もう三年たってしまった。

土手を歩いても、公園の裏の駐車場を見ても猫がいない。私が“こうちゃん”という名前を付けた白黒の猫は居なくなってしまった。よく日向で木々を眺めていた姿は、そこから消えていた。会ったときにあげようと思って買ったおやつは、賞味期限を迎えていた。もう会うことはないのだろうか、この街を離れてしまったのだろうか、そもそも彼はもう…など考えていた。

 

その時この街に、猫の鳴き声が響いた。それは「にゃー」というより「きゅー」といった感じで、すごく高い声だった。私は子猫が迷い込んできたのだろうと、深く考えなかったが何度も鳴き声が聞こえるので家の裏に視線を移した。

彼はそこにいた。大きな駐車場から道路を渡ろうと右を眺めているようだった。もうこの街から離れたもんだと思っていたので思わず目を見開いて口元に手を当ててしまった。

窓を開けて猫の鳴きまねをすると、彼は「きゅー」と云い、進行方向を変えて家の裏に向かってきた。そのまま草むらの雑草の山に飛び込んだ。彼のおちゃめな一面、私は見たことがなかった。いつもクールな顔つきだった彼が、勢いよく雑草に身を投げたのだ。彼は数秒した後雑草の山から出てきてブロック塀に飛び乗り、軽快な足取りで消えてしまった。

でも私は嬉しかった。彼が生きているということが知れただけで幸せだった。

 

また、気が向いたら「にゃー」って鳴いてくれよ。ちゅーる買いなおしておくからね。